
こんにちは!おウマです
今回は『名馬の馬体診断』シリーズ4回目です!

名馬の写真や動画を使いながら、馬体診断講座で紹介してきた方法で実際に診断していくよ
名馬を馬体診断してみよう!
馬体診断講座では、全9回にわたって、馬体診断の方法を紹介してきました。
『名馬の馬体診断シリーズ』では応用編として、重賞で活躍するなど既に答えが出ている馬の募集時の写真や動画を使っていきます。
馬体診断結果と、実際の成績との比較も行い、結果に相違があった場合はなぜそうなったのか、その要因についても考察していきます。
良い馬体の写真をたくさん見ることで、良い馬体のシルエットや雰囲気を掴むトレーニングになりますので、今回例に挙げた馬以外でも、是非ご自分で試してみてください。
ブラストワンピースの馬体診断結果

今回も、実際の名馬の馬体写真・動画に、これまでの馬体診断の方法を当てはめ、指標から導いた競走馬像と実際の成績の比較をしていきます。
今回の対象馬は『ブラストワンピース』です。
馬体診断結果
まずは、ブラストワンピースの馬体診断の結果を先にお知らせします。
適性:芝 中・長距離
能力:優秀
注意点:肩周り・背中の疲労、左トモの傷み
馬体診断結果の根拠
繋ぎの柔軟性から、馬場適性は芝と判断しました。
ダート適性に反する特徴はないので、ダートも問題なくこなすことができると思いますが、芝が走れるなら芝を使うでしょう。
距離適性については、短・中・長距離、それぞれへの適性を示す指標が見られますが、平行尻の影響で短距離で必要な加速力が足らず、距離適性は中・長距離に限定されそうです。
広い胸と短い背中、伸びのある腹のラインを有しており、パワフルなエンジンと伸びのある走りに大いに期待できます。
トモは十分に大きく、骨盤のブレはほとんど見られないので、トモで生み出した推進を、しっかりと活かすことができる馬体構造です。
能力面は申し分ないですが、体質面で少し心配な点が多い馬体でもあります。
まず、かなり大きい頭によって、それを支える肩や背中周りに負担が掛かりそうです。
また、距離適性が中・長距離でありながら、やや短く太い首をしているため、スムーズな重心移動を阻害し、肩回りの筋肉には疲労がたまりやすい構造をしています。
総じて、高い能力により一定以上の成績は残せそうですが、定期的に足元や馬体のメンテナンスが必要となり、順調な競走馬生活を送ることが難しい可能性があります。
診断する項目
馬体診断講座で紹介した項目は以下の通りです。

『馬体診断講座』を読んでない方はこちらからどうぞ!
今までと同様に、『第一印象』についてはバイアスが掛かるのを避けるために除外して診断しています。
また、馬場適性を測る『繋ぎの角度』と、故障リスクを測る『繋ぎの角度』のように、目的は別でも同一箇所の診断となる場合は、まとめて記載するようにします。
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馬場適性の診断
ここからは、ブラストワンピースの馬体写真と歩様動画を使って、馬体診断の項目ごとに細かく診断していき、冒頭の診断結果に至った経緯を紹介します。
まずは『繋ぎの角度と柔軟性』から、馬場適性を読み解いていきます。
同時に、『繋ぎの角度』による故障リスクもチェックします。
参考とした馬体写真

参考とした歩様動画
繋ぎの角度

繋ぎの角度は54.1度で、立ち気味の繋ぎをしています。
角度は適正範囲内なので、馬場適性についてはどちらも問題なくこなすでしょう。
繋ぎの角度による故障リスクはやや高いです。
繋ぎの柔軟性

着地後に球節が沈み込む柔らかい歩様をしています。
芝向きの歩様で、特に加減点はありません。
距離適性の診断
続いて、以下の4項目から距離適性を診断していきます。
同時に、『尻の形』『首の太さ』によるリスク診断も行っています。
肩の角度

肩の角度は地面に対して『51.6度』でした。
平均的な角度で、長短問わず柔軟な距離適性に期待できます。
筋肉のボリュームは2歳馬なりの肉付きですが、骨格ががっしりとしています。
尻の形

やや平行尻気味です。
加速力が必要な短距離は向かない構造です。
先行策を得意とする傾向があるため、ダート向きの特徴でもありますが、長距離を走る場合は芝でも不利には働きません。
重心の高低

体高と体長はほぼ等しく、バランスの取れた馬体です。
この指標においては、距離の長短問わず力を発揮できる馬体であると判断できます。
首の太さ・長さ

長く太い首をしています。
長距離向きの首の長さですが、首の筋肉が効率の良い動きを阻害する要因となり得ます。
同時に、頭がかなり大きく見えるので、それを支える肩や背中周りの筋肉の疲労に注意が必要です。
募集動画を見て、首が上手く使えていないようだと、大きく割り引いてよいと考えます。
馬の能力の診断
続いて、以下の6項目から馬の能力を診断していきます。
同時に、『管の長さ』『背の長さ』『骨盤のブレ』によるリスク診断も行っています。
胸の広さ

45度が及第点に対して、ブラストワンピースの胸の広さは51.9度と、かなり角度が大きく優秀な心肺機能を有していることが予想されます。
前腕と管の比

前肢のうち前腕が占める割合が大きいので、前肢に豊富な筋肉を有していることが分かります。
前肢をしっかりと引き上げて遠くに着地させることができ、トモからの推進を効率よく進行方向に伝えることができると予想できます。
管は長すぎることなく、過度な負荷が掛かる構造ではありません。
首の使い方

頭を上下左右にしっかり振って歩くことができており、首を上手に使って歩いています。
頭が大きいため「首が上手く使えないのでは?」と心配しましたが、力強い首の使い方で、重心移動は問題はなさそうです。
しかし、重い頭を支えるので、背中や肩回りに負担が掛かりそうなのは変わりありません。
長躯短背

典型的な長躯短背の馬体です。
トモからの推進をスムーズに上半身に伝え、身体を大きく使った伸びのある走りに期待できます。
トモの大きさ

体躯に対してのトモの割合が34.5%で、三分の一以上を占めており、かなり大きなトモを有していることが分かります。
推進力のある走りに期待できます。
骨盤のブレ

左右のブレがほとんど見られず、芯が通った歩様です。
トモからの推進を効率よく前方に伝えることができそうです。
強いて言えば、右トモの方が下がる傾向にあるので、左トモに負荷がかかって傷み易いかもしれません。
馬体が抱えるリスク
続いて、以下の4項目から馬体が抱えるリスクを診断していきます。
肢部白斑

右トモの繋ぎに白斑が見られます。
範囲は広くないため、皮膚炎のリスクはそこまで高くなさそうです。
右トモの蹄は一部白く、黒蹄と比較すると角質の弱さに悩まされる可能性があります。
不正肢勢

前腕と管の接続にズレはなく、馬体から地面に対して真っ直ぐに降りています。
不正肢勢による故障のリスクは心配いらなさそうです。
内弧・外弧歩様

繋ぎ以下を内側に回して歩く内弧歩様です。
交突や蹄の変形のリスクがありますが、他部位次第で目を瞑ってもよいレベルです。
トモの肢勢

やや狭踏肢勢です。
特に右トモの踏み込み時に、狭踏の傾向が強いので、前述の骨盤のブレによる影響と思われます。
交突や蹄の変形のリスクはありますが、程度は悪くなく、他部位の美点を優先して問題ないでしょう。
適性の一致
ここまでの馬体診断から推察できた適性をまとめます。
芝の適性を示す馬体です。
距離適性が不問を示す特徴が多く、幅広い距離に対応しそうですが、平行尻の影響で短距離で必要な加速力が足らず、距離適性は中・長距離に限定されそうです。

診断お疲れさまでした!

それでは、診断結果の発表です!
馬体診断結果と戦績の比較

これまでのブラストワンピースの馬体診断を踏まえて、最終的な適性や能力の予想を立ててみましょう。
ブラストワンピースの馬体診断結果
ブラストワンピースの戦績
日付 | 開催 | 距離 | レース名 | 着順 |
---|---|---|---|---|
2021/8/22 | 札幌 | 芝2000 | 札幌記念(G2) | 5 |
2021/6/5 | 中京 | 芝2000 | 鳴尾記念(G3) | 3 |
2020/12/27 | 中山 | 芝2500 | 有馬記念(G1) | — |
2020/11/1 | 東京 | 芝2000 | 天皇賞・秋(G1) | 11 |
2020/6/28 | 阪神 | 芝2200 | 宝塚記念(G1) | 16 |
2020/4/5 | 阪神 | 芝2000 | 大阪杯(G1) | 7 |
2020/1/26 | 中山 | 芝2200 | AJCC(G2) | 1 |
2019/10/6 | ロンシャン | 芝2400 | 凱旋門賞(G1) | 11 |
2019/8/18 | 札幌 | 芝2000 | 札幌記念(G2) | 1 |
2019/5/26 | 東京 | 芝2500 | 目黒記念(G2) | 8 |
2019/3/31 | 阪神 | 芝2000 | 大阪杯(G1) | 6 |
2018/12/23 | 中山 | 芝2500 | 有馬記念(G1) | 1 |
2018/10/21 | 京都 | 芝3000 | 菊花賞(G1) | 4 |
2018/9/2 | 新潟 | 芝2000 | 新潟記念(G3) | 1 |
2018/5/27 | 東京 | 芝2400 | 日本ダービー(G1) | 5 |
2018/3/24 | 阪神 | 芝1800 | 毎日杯(G3) | 1 |
2018/2/4 | 東京 | 芝2400 | ゆりかもめ賞 | 1 |
2017/11/19 | 東京 | 芝1800 | 2歳新馬 | 1 |
現役終盤は鞍を譲ることが多かったですが、池添謙一騎手とのコンビで、3歳時に有馬記念を制する快挙を成し遂げた名馬です。
デビュー戦と毎日杯(いずれも芝1800メートル)以外は、2000メートル以上の舞台で戦っています。
インパクトの強い勝ち方と、池添騎手とのコンビという組み合わせで、オルフェーヴルを彷彿とさせる馬でしたが、慢性的な背腰の傷みに悩まされ、順風満帆な競走馬生活を送ることは叶いませんでした。
もともと大型な馬ですが、体質の弱さゆえに調整が難しいことも相まって、古馬になってからは540キログラムを超える体重でのレースが続きます。
必要以上に重い身体でレースに挑んだ影響もあり、右前肢球節に負った不安が解消せず、先日2022年1月19日に志半ばで引退することとなりました。
有馬記念に加えて重賞を4勝という成績ながら、種牡馬入りすることができず、引退後は乗馬になることが発表されました。
本馬の引退の知らせを受けた池添謙一騎手が
「自分が上手く乗れば(他のG1タイトルも)勝ててたんじゃないかと…そうすれば種牡馬としての道があったのにと…申し訳ない気持ちで一杯です。有馬記念だけでも種牡馬になれると思っていました。騎手としての責任を感じています。」
と、後悔の念を記したことは記憶に新しいです。

池添ジョッキーのこういうところが、本当に素敵だと思います。

『競馬』というより『馬』を愛して、『魂』で乗ってくれてる気がするよね
馬体診断結果と戦績の比較
馬体診断の結果では、ブラストワンピースは『芝の中・長距離』という適性結果でした。
今回も、馬体診断結果と実績との間に大きな乖離はなかったです。
背腰の傷みやすさによる、定期的なケアや休養が必要となってしまった点も、しっかり分析できていました。
予想に反したのは、ここまで大きな馬体になったことです。
予想に反した、というよりは馬体診断の際に考慮していなかった点ですね。
540キログラムとなると、相当足元への負担も大きいですから、『目を瞑っても良い』とした、内弧歩様や膝被りも少なからず影響を与えたと思われます。
まとめ

いかがだったでしょうか?
今回はブラストワンピースの馬体を診断しました。
今後も名馬の馬体診断を続けていく中で、データとして蓄積されて共通性が出てくることに期待しています。
『名馬の馬体診断』初回のアーモンドアイに続いて、早くもシルク・ホースクラブから2頭目の選出ですが、募集動画をyoutubeにアップロードしてくれている一口馬主クラブが意外と少なく、今後もシルクの所属馬にお世話になることが多くなりそうです。
皆さまの素敵な一口馬主クラブライフの一助となれば大変光栄です。
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最後まで読んでくれてありがとう!

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