
こんにちは!おウマです
今回は『名馬の馬体診断』シリーズ5回目です!

名馬の写真や動画を使いながら、馬体診断講座で紹介してきた方法で実際に診断していくよ
名馬を馬体診断してみよう!
馬体診断講座では、全9回にわたって、馬体診断の方法を紹介してきました。
『名馬の馬体診断シリーズ』では応用編として、重賞で活躍するなど既に答えが出ている馬の募集時の写真や動画を使っていきます。
馬体診断結果と、実際の成績との比較も行い、結果に相違があった場合はなぜそうなったのか、その要因についても考察していきます。
良い馬体の写真をたくさん見ることで、良い馬体のシルエットや雰囲気を掴むトレーニングになりますので、今回例に挙げた馬以外でも、是非ご自分で試してみてください。
インディチャンプの馬体診断結果

今回も、実際の名馬の馬体写真・動画に、これまでの馬体診断の方法を当てはめ、指標から導いた競走馬像と実際の成績の比較をしていきます。
今回の対象馬は『インディチャンプ』です。
馬体診断結果
まずは、インディチャンプの馬体診断の結果を先にお知らせします。
適性:ダート 短距離
能力:優秀
注意点:繋ぎの角度に起因する『骨折』のリスク
馬体診断結果の根拠
『繋ぎの角度と柔軟性』から、馬場適性はダートと判断しました。
特に、繋ぎの角度は『56.3度』で結構立っています。
冬時期の芝コースなど、硬い馬場では指骨や管骨に大きな負荷が掛かりそうです。
距離適性については、一貫して短距離への適性を示しており、距離が伸びそうな要素は見当たらないため、距離適性は短距離に限定されそうです。
『骨盤のブレ』と『首の使い方』に関しては、最上級と言っても過言ではないほどに、素晴らしい特徴を持っています。
後肢が生み出した推進を、しっかり前方向へのエネルギーに換えるという面で、『骨盤のブレ』や『首の使い方』の方が重要であると考えているため、この点を大きく評価して能力は『優秀』としました。
懸念点としては、前述の通り『前肢の故障リスク』と『胸の広さ』が平凡であることです。
速く走る構造という面では申し分ない馬体ですが、心肺機能が平凡であると予想されるため、性能を活かし切れない可能性があります。
診断する項目
馬体診断講座で紹介した項目は以下の通りです。

『馬体診断講座』を読んでない方はこちらからどうぞ!
今までと同様に、『第一印象』についてはバイアスが掛かるのを避けるために除外して診断しています。
また、馬場適性を測る『繋ぎの角度』と、故障リスクを測る『繋ぎの角度』のように、目的は別でも同一箇所の診断となる場合は、まとめて記載するようにします。
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馬場適性の診断
ここからは、インディチャンプの馬体写真と歩様動画を使って、馬体診断の項目ごとに細かく診断していき、冒頭の診断結果に至った経緯を紹介します。
まずは『繋ぎの角度と柔軟性』から、馬場適性を読み解いていきます。
同時に、『繋ぎの角度』による故障リスクもチェックします。
参考とした馬体写真

参考とした歩様動画
繋ぎの角度

繋ぎの角度は56.3度で、立った繋ぎをしています。
角度は適正範囲外で、馬場適性についてはダート向きの特徴です。
また、繋ぎが立っていることで、球節の沈み込みによるクッションが効かないので、着地時の衝撃をうまく吸収することができず、手根骨や指骨などの骨折リスクが高くなります。
繋ぎの柔軟性

着地後の球節の沈み込みは控えめで、繋ぎは硬い部類です。
『繋ぎの角度』と同様に、ダート向きの歩様で、特に加減点はありません。
距離適性の診断
続いて、以下の4項目から距離適性を診断していきます。
同時に、『尻の形』『首の太さ』によるリスク診断も行っています。
肩の角度

肩の角度は地面に対して『56.4度』でした。
肩は立っていて、短距離向きの適性を示す馬体です。
皮膚が分厚そうな、むっちりとした筋肉のつき方ですね。
尻の形

綺麗な丸みを帯びた『正尻』です。
距離適性の長短に影響はなく、どの距離でも力を発揮できる特徴です。
重心の高低

体長が体高よりも長い、低重心の馬体で短距離向きの馬体です。
首の太さ・長さ

短く、かなり太い首をしています。短距離適性を示す特徴です。
豊富な首の筋肉でパワフルな走りに期待できますが、他部位の影響で中・長距離適性になった場合は効率の良い動きを阻害する要因となり得ます。
馬の能力の診断
続いて、以下の6項目から馬の能力を診断していきます。
同時に、『管の長さ』『背の長さ』『骨盤のブレ』によるリスク診断も行っています。
胸の広さ

45度が及第点に対して、インディチャンプの胸の広さは43.2度と小さく、心肺機能は平均以下であることが予想されます。
前腕と管の比

前肢のうち前腕が占める割合が大きいので、前肢に豊富な筋肉を有していることが分かります。
前肢をしっかりと引き上げて遠くに着地させることができ、後肢からの推進を効率よく進行方向に伝えることができると予想できます。
管は長すぎることなく、過度な負荷が掛かる構造ではありません。
首の使い方

『上手な首の使い方』として見本にあげられるほどに、素晴らしい首の使い方です。
上下左右に力強く振ることができており、かなり効率の良い動きができています。
効率の良い歩行で、肩や背腰の筋肉の負担は少なく、順調な競走馬生活を送ることができそうです。
長躯短背

背中のラインは短く、後肢からの推進をスムーズに上半身に伝えることができそうです。
対して、腹のラインはゆったりと長く、身体を大きく使った伸びのある走りに期待できます。
両者の長さを比較してみると、典型的な長躯短背の馬体であることが分かります。
後肢の大きさ

体躯に対しての後肢の割合が33.9%で、三分の一以上を占めており、十分に大きな後肢を有していることが分かります。
推進力のある走りに期待できます。
骨盤のブレ

左右のブレがほとんど見られず、芯が通った素晴らしい歩様です。
後肢からの推進を効率よく前方に伝えることができ、『トモの緩さ』とは無縁の競走馬生活を送ることができそうです。
馬体が抱えるリスク
続いて、以下の4項目から馬体が抱えるリスクを診断していきます。
肢部白斑

四肢すべてに白斑は見られず、皮膚炎のリスクは低そうです。
同様に白い蹄も見られず、すべて黒蹄で蹄疾患に悩まされる可能性も低いでしょう。
同程度の条件の馬と悩んだ場合は、こちらを優先して良いと思います。
不正肢勢

前腕と管の接続にズレはなく、馬体から地面に対して真っ直ぐに降りています。
不正肢勢による故障のリスクは心配いらなさそうです。
内弧・外弧歩様

繋ぎ以下を内側に回して歩く内弧歩様です。
少しきつめに内弧しているので、交突や蹄の変形のリスクがあります。
後肢の肢勢

ほぼ正常な肢勢です。
強いて言うなら、狭踏肢勢気味ではありますが、他部位の美点を優先して問題ないでしょう。
適性の一致
ここまでの馬体診断から推察できた適性をまとめます。
繋ぎが立っていて、硬いため、ダートの適性優位を示す特徴を持った馬体です。
距離適性については、一貫して短距離適性が優勢です。
適性の不一致はなく、美点が活きる馬体と言えます。

診断お疲れさまでした!

それでは、診断結果の発表です!
馬体診断結果と戦績の比較

これまでのインディチャンプの馬体診断を踏まえて、最終的な適性や能力の予想を立ててみましょう。
インディチャンプの馬体診断結果
インディチャンプの戦績
日付 | 開催 | 距離 | レース名 | 着順 |
---|---|---|---|---|
2021/12/12 | シャティン | 芝1600 | 香港マイル(G1) | 5 |
2021/11/21 | 阪神 | 芝1600 | マイルCS(G1) | 4 |
2021/6/6 | 東京 | 芝1600 | 安田記念(G1) | 4 |
2021/3/28 | 中京 | 芝1200 | 高松宮記念(G1) | 3 |
2021/2/28 | 阪神 | 芝1400 | 阪急杯(G3) | 4 |
2020/12/26 | 阪神 | 芝1400 | 阪神C(G2) | 3 |
2020/11/22 | 阪神 | 芝1600 | マイルCS(G1) | 2 |
2020/6/7 | 東京 | 芝1600 | 安田記念(G1) | 3 |
2020/4/26 | 京都 | 芝1600 | 読売マイラーズC(G2) | 1 |
2020/3/1 | 中山 | 芝1800 | 中山記念(G2) | 4 |
2019/12/8 | シャティン | 芝1600 | 香港マイル(G1) | 7 |
2019/11/17 | 京都 | 芝1600 | マイルCS(G1) | 1 |
2019/10/6 | 東京 | 芝1800 | 毎日王冠(G2) | 3 |
2019/6/2 | 東京 | 芝1600 | 安田記念(G1) | 1 |
2019/4/21 | 京都 | 芝1600 | 読売マイラーズC(G2) | 4 |
2019/2/3 | 東京 | 芝1600 | 東京新聞杯(G3) | 1 |
2018/12/16 | 阪神 | 芝1600 | 元町S | 1 |
2018/7/8 | 中京 | 芝1600 | 有松特別 | 1 |
2018/6/16 | 阪神 | 芝1600 | 小豆島特別 | 2 |
2018/4/14 | 阪神 | 芝1600 | アーリントンC(G3) | 4 |
2018/3/24 | 阪神 | 芝1800 | 毎日杯(G3) | 3 |
2018/1/13 | 京都 | 芝1600 | 3歳500万下 | 1 |
2017/12/28 | 阪神 | 芝1400 | 2歳新馬 | 1 |
全23戦のち8勝を挙げ、3歳の暮れに連勝でオープン入りすると、翌年初戦で東京新聞杯(G3)を制し、重賞ウィナーの仲間入りを果たします。
勢いそのままに、同年の安田記念とマイルチャンピオンシップを優勝し、史上7頭目となる『同一年春秋マイルGI制覇』の偉業を成し遂げました。
4歳にしてトップマイラーの座に輝いたインディチャンプですが、2歳育成時は体質が弱く、調教強度を上げてはどこかを傷めを繰り返していたそうです。
デビューは2歳の年末ですから、調整に苦労したことがうかがえます。
しかし、2度の香港遠征では苦杯を嘗めたものの、現役時代は『掲示板を外したのは1回のみ』と、抜群の安定感を持った馬でした。

同世代の『アーモンドアイ』のマイルでの覇権に『待った』を掛けた安田記念は熱かったね!

『ここは俺の舞台!』という気概が感じられたよね
馬体診断結果と戦績の比較
馬体診断の結果では、インディチャンプは『ダートの短距離』という適性結果でした。
戦績は芝のマイルを主戦場として、同一年春秋マイルG1を制覇しています。
1800m戦には3度挑戦して3着2回、4着1回と善戦していますが、どれも1着には0.3秒以上の差をつけられており、マイルでの安定感と比較すると物足りず、適正な距離だったとは言えないでしょう。
対して、キャリア終盤では高松宮記念(芝1200m)に挑戦し、ダノンスマッシュの0.1秒差で2着入線していることからも、距離適性は短距離に偏重していたことが分かります。
馬場適性に関しては、予想に反して23戦すべてを芝のレースで戦っています。
『繋ぎの角度』の診断結果では繋ぎが立っており、『繋ぎの柔軟性』も富んだ歩様ではなかったので、冬場の硬い芝を何度も走っても、足元の故障に泣かされなかったのは幸運でした。
『首の使い方』と『骨盤のブレ』の診断結果は素晴らしく、馬体面で優れた特徴を持ちながら、『規格外の強さ』を見せるタイプではなく、『真っ当に強い馬』という評価に留まった要因は、『心肺機能』が平凡であったことと、芝で使われ続けたことによるものだと考えています。
まとめ

いかがだったでしょうか?
今回はインディチャンプの馬体を診断しました。
診断結果『ダートの短距離』に対して、戦績は『芝の短距離』となり、馬場適性は診断結果と合致しませんでした。
『名馬の馬体診断』第2回のデアリングタクトの時も、言い訳 補足しましたが、(脚部不安などの要因を抱えていない限り)ダート適性が高くても、芝で結果が出ているうちは、芝を使い続けることになります。
これは、JRAの番組編成が芝に偏重していることに起因し、生産地からは再三の改善要請が出ていますが、一向に変わる気配がないので、今後も芝馬が優勢な時代が続くと思われます。
もともと、外見での適性判断要素が少なく、判別が難しいこともあり、馬場適性の診断結果の有効性は低そうですね。
また、今回も角度や比率など、データとして数字を残せるものについては残しています。
今後の診断の精度を上げていくのに役立ちそうです。
今回は以上で終わりとなります。
この記事が、皆さまの素敵な『POG/一口馬主クラブ』ライフの一助となれば大変光栄です。
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最後まで読んでくれてありがとう!

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