こんにちは!おウマです。
ユーマ、今回は何のおはなし?
馬の牧場での仕事についてだよ。
時々テレビでも取り上げられたりするよね
おウマの故郷のはなしだね!楽しみ♪
みなさんも、楽しんでいってください!
馬の牧場での仕事
テレビなどでたまに取り上げられる機会もありますが、馬の牧場での仕事について、その詳細を知る人は少ないですよね?
馬の牧場の仕事は、生き物を扱う仕事です。
現場の仕事は「臭い」「汚い」「危険」の3Kに加え、「給料安い」「休日ない」のライフワークバランスもびっくりの5Kまで見事に網羅しています。
でも、やりがいが多く、楽しい仕事であることは間違いないです。
この記事では、そんな馬の牧場での仕事について、以下の目次に沿って噛み砕いて分かりやすく紹介します。
競馬のお仕事に興味のある方や、馬が好きな方に、華やかな表舞台の裏側として知ってもらえたら嬉しいです。
馬の牧場の種類
馬の牧場を大まかに分類すると「生産牧場」と「育成牧場」、「休養牧場」に加え、それらを総合的に扱う「総合牧場」の4つに分けられます。
それぞれ、このような特徴があります。
いろんな牧場があるね!
ユーマはどこで働いてたの??
ボクは「総合牧場」で働いてたよ!
お産にも立ち会ったし、馬にも乗ってたんだ
オススメ記事
仔馬が競走馬になるまでの流れ
ここまでは各牧場の仕事内容をざっくりまとめてみました。
ここからは、それぞれ詳しく説明していきますね。
生産牧場の仕事
「生産牧場」では、繁殖牝馬を繋養し、種付け(交配)、仔馬の生産を行うだけでなく、産まれてきた仔馬の世話や、馬を放牧する放牧地の管理など、競走馬の繁殖に関わる、業務を多岐に渡って担います。
産まれてきた仔馬たち(当歳馬)は、だいたい秋ぐらいになると「離乳」されて、母馬と離され、当歳馬同士で放牧されるようになります。
ちなみに、広義では、ここから初期”育成”とも捉えられますが、1歳の秋から開始する「騎乗馴致」から育成牧場に移行し、それまでは生産牧場がカバーすることが多いです。
これは、当歳馬に関わるスタッフを変えないことで、母馬と離されてしまうストレスを、少しでも軽減してあげることが目的です。
産まれてきてから、約1年半、たっぷりと人に愛情を注がれて、育っていくので、騎乗馴致にもすんなりと移行できますし、環境の変化によるストレスも最低限で抑えることができます。
こうして「生産牧場」では、
出産(2~5月)
↓
種付け(3月~6月)
↓
離乳(9~10月)
↓
出産…
といった繁殖サイクルの他に、離乳後の1年で人が触ることに馴らす、乗れるような体づくりを促していく、初期育成のサイクルも担っています。
おウマは離乳の時寂しくなかった?
どこを探してもお母さんがいなくて1日中泣いてたよ…ヒヒン
そうだよねぇ…
実際に暴れたり脱走しようとしたりして、離乳タイミングでの事故は多いんだよ
おウマは競走馬になるために頑張ったよ!
おウマえらい!
じゃあここからは「生産牧場」から「育成牧場」にバトンタッチだよ
育成牧場の仕事
騎乗馴致から”競走馬”になるまでと、それからのお話に変わります。
1歳の秋ごろ、初期育成を終えた馬たちは、大きな放牧地で自由に駆け回っていた「生産牧場/初期育成牧場」から調教施設を備えた「育成牧場」へ移動します。
「生産牧場/初期育成牧場」で、人が触ることや手入れすることに馴れ、丈夫な体づくりを行ってきた仔馬たちは「育成牧場」に移ると、端的に言えば”馬から競走馬になる”ための訓練を行います。
大局はこのような感じです。
- 曳き馬の練習(人と一緒に歩く練習)
これは身体が大きくなってからでは人間の力ではどうしようもなくなるので、お互いのために幼少期にちゃんと覚えさせないといけません。
- ウォーキングマシーンに入る練習
馬は基本的に初めての場所に踏み入れるのを嫌がります。
曳き馬の練習がきっちりできていないと、マシーンの入り口以外の退路を断って無理やり入れるしかなくなってしまいます。
- ハミによる指示を覚える練習(ロンジング)
右の口に力が掛かれば右に行く、左なら左、というように、手綱からハミを通して馬に指示を理解させます。
まだ乗れないので、長い手綱を馬の後ろから操作します。
- 鞍など馬装に馴れる練習
ロンジングと並行して、人間が乗る為の馬具の装着にも慣れさせていきます。
もちろん最初は飛び跳ねたりダッシュで逃げたりしますが、根気よく徐々に馴らしていきます。 - 人が乗る練習
いよいよ人が乗る練習です。
最初は馬の横でジャンプしてみたり、腹ばいで体重をかけてみたり、「大丈夫だよー」などと声を掛けながら徐々に馴らしていきます。
- 脚や声などによる人間の指示を理解する練習
人が背中に乗っていることに慣れたら、次は脚や、声、舌鼓による指示を教えます。
【脚】きゃく。騎乗者が足でウマの腹を締めたり蹴ったりすることによる、物理的な指示です。
【声】主に馬を落ち着かせたり、停止させたりするときに発する音声による合図です。
「ほーお」とか「おーお」など人それぞれ。漫画などでは「どうどう」と表現されているのをよく見ますね。
【舌鼓】ぜっこ。舌打ちのように「ちっちっ」と音を鳴らす指示。
集中していないときに乗り役の方に気を引いたり、発進させるときの合図などに使用します。
- 走路デビュー!
一通り慣れて騎乗者からの指示も覚えたら、いよいよ走路デビューです!
初めての経験にみんなソワソワですが、大概は走ることの楽しさが勝って気持ちよく走っています。
- キャンター(駆け足)調教で身体能力の強化
走路で人を乗せて走れるようになったら、あとは競走馬になるためにひたすらトレーニングです。
だいたい日曜日以外の週6日をトレーニングに費やします。
- 馬運車に乗る練習
ウォーキングマシーンと同様に、馬運車にも最初は乗れません。
度胸のある馬が先陣を切って、そのあとにゾロゾロと着いていく光景が毎年見られます。
- ゲート練習
競走馬になる為には避けて通れないゲート練習。
怖い思いをさせないように、細心の注意を払って練習します。
- 競馬場へ
育成牧場でのトレーニングを終え、ついに競馬場へ!
約1年の短い付き合いですが、牧場から出発するときは寂しくなります。
めちゃくちゃざっくり書いたので、実際に現場で仕事をしている人が読まれると怒られてしまうかもしれません…
例えばゲート練習では、まず何頭かはゲートに近づくことすらできません。
初めて見るものには敏感なので、怖がって吹っ飛んで逃げていきます。
ゲートの周りをぐるぐる回って、馴れてきたら匂いを嗅がせて、ようやく安全なものだと認識してくれます。
それが1日目。
翌日は、すんなり近づいて扉のない練習ゲートをくぐれました!
さぁ、もう馴れてるから次はゲート内で駐立だなー、なんて思ってると、昨日は閉まっていた隣の扉が開いているだけで、ぶっ飛んでいきます。
どの段階においても、3歩進んでは2歩下がるような、地道な馴致を経て”人を乗せて走る”という競走馬の基礎が出来上がっていきます。
そんな”騎乗馴致・調教のサイクル”を経て、晴れてトレセンや各競馬場へ入厩した”競走馬”は、調教師の下でレースへ向けた仕上げを受けて、待望のデビューを迎えます。
総生産頭数に対し、無事にデビューまでたどり着ける馬は70%程度と言われていて、仔馬時代の事故や、育成過程でのケガなどで競走馬になれない馬もたくさんいます。
なので、結果はさておき、無事に競走馬デビューができただけで万々歳な世界なんですよ。
おウマは競馬場に向けて牧場を出発したけど、台風でフェリーが出なくて帰ったことがあったよ。
みんなに見送ってもらったのに恥ずかしかった…
それはドンマイだね笑笑
休養牧場の仕事
さて、無事競走馬としての一歩を踏み出した馬たちも、常に競馬場にいるわけにはいきません。
調子を崩してしまったり、レース番組の都合上、次走までの間隔が空いてしまう時は「休養牧場」に放牧に出て、そこで出番まで英気を養います。
休養牧場での仕事は、その放牧に出てきた馬たちが再びレースに出走できる状態まで回復させること。
疲労やケガの治癒や、競馬場に戻るまでの期間のトレーニングを行います。
生産・育成牧場が北海道に集中しているのに対して、休養牧場は滋賀の栗東トレセン、茨城の美浦トレセンの近郊に集まっています。
これはなぜかというと、既走馬の場合は放牧といっても実際に放牧地へ放すわけではなく、馬房で休んだり軽めの運動でトレーニングしたりするので、走路分の土地が確保できれば良いんですよね。
つまり、広大な放牧地を用意しなくていいので、競馬の拠点である東西トレセンの近くに牧場を構える方が移動が少なく、馬に負担を掛けないことに繋がるからなんです。
競走馬事業の大きなサイクル
そんなこんなで生産牧場で生まれた仔馬は、育成牧場で競走馬への成長し、無事に競走馬としてデビューした後は、
レース
↑↓
トレセン・競馬場
↑↓
休養牧場
という”競馬のサイクル”を繰り返して、現役生活を過ごしていくのです。
そして運よく、競走馬として結果を残した極々一部の馬たちは、その血を次代へ繋ぐために種牡馬・繁殖牝馬となってスタリオンに繋養されたり各牧場へ帰っていきます。
こうして、また新たな繁殖サイクルが生まれ、競走馬事業としての大きなサイクルが閉じるのでした。
おウマはレースは全然ダメだったけど、しゃべれるから引く手数多だったよ。
おウマさん、さすがです!
まとめ
総合牧場の現場で実際に馬と触れ合って働いていた当時、こういうゼロからの努力の部分が競馬ファンの人たちに届いていない現状を、正直なところすごく悔しいと思っていました。
「なんで調教師とか騎手ばっかり…。出来上がった馬をレースに走らせるだけなのに…。」
なんて卑屈な考えも持ったりして。
しかし、同じ競馬関係の仕事とはいえ現場を離れてスタンスが変わった今では、ファンの方が娯楽として競馬を楽しむためには、すべてを知ってもらう必要はないと思うようになりました。
時折、このサイトに訪れたアナタのように、興味を持ってくれた一部の方が裏方の仕事について知ってくれるだけで、とても幸せなことだと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
是非、他の記事も読んでいってね!